今年、最近までに観た映画〜映画館〜 2

 

マンデラ 自由への長い道』

ネルソン・マンデラの自伝を元にした映画。若い頃の彼は血気盛んで猛々しく、晩年の泰然としたイメージとはかけ離れていて、そこが興味深い。演じるイドリス・エルバの役作りが凄くて、表情や仕草がそっくりだった。理想を唱えるだけでなく、体現できるのは偉大なことだ

 

X-MEN: フューチャー&パスト』

リブートと過去シリーズが接続されて合流。ファーストジェネレーションにおけるテーマが拡張され、個々のキャラクター同士は複雑に絡み合いながら、全体としてはシンプルな構成という、なかなかの離れ業。ハスベンダーのマグニートーは本当にいい。陰鬱でアツい

 

『デンジャラス・バディ』

チグハグな刑事&FBIコンビが暴れ回るバディモノのコメディ。メリッサ・マッカーシー演じる「不良刑事」マリンズの魅力が、全体を牽引していると言って過言ではないだろう。メリッサもサンドラ・ブロックも素っぽいところがあって、そこが面白かった。シリーズ化しそう

 

『PERSONA3 THE MOVIE #2 Midsummer Knight's Dream』

案の定だった…所謂「V・フォー・ヴェンデッタ現象」ってやつで、原作通りなのに恐ろしくツマラナイ。メディアの移行に伴って必要だった再構成が失敗しているからだ。こりゃ最後までダメだろうな

 

グランド・ブダペスト・ホテル

ウェス・アンダーソン、やりおる。面白かった。ドラメディ(ドラマ+コメディ)ってジャンル分けされてるみたいだけど、そんなアホな区分より前に監督の個性が出てる。滑稽でありながらも、常に背後には戦争の影が付きまとう。グスタフ氏が守り抜いた幻想の欠片を見た

 

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌

久しぶりのコーエン兄弟映画。あれ?人が死なないぞ!?…ただ、グサッっと刺さる映画ではあった。60'のフォークシーンを知っているとより楽しく観られたのだろうけど、知らなくても十分楽しめた。歌はどれもいいし、色々考えさせてもくれる

 

攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears』

今までの中で一番地に足の着いたドラマが展開されていた。しかし相変わらずテーマや情感を掘り下げていって欲しい場面で「尺」に邪魔され、それが成らない感じが勿体無いなぁと思う次第。監督の着想は絵描きならではで面白かったな

 

ブルージャスミン

やっと観たけど…ホラー映画じゃないか!ケイト・ウィンスレット演じる主人公「ジャスミン」の狂気とも呼ぶべき精神の不安定さが次々と周囲に伝染し、全てを悪い方へと押し流していく。完全にジェットコースタームービー。勿論笑えるけど、自分の中では恐ろしさが完全に勝っていた

 

『サードパーソン』

60歳越えてムッキムキのリーアム・ニーソンの体しか覚えていない…なんてことはないけど、体仕上がりすぎだろ、リーアム・ニーソン。なんのためにだよ。複雑なようで、そうでもない構造。エイドリアン・ブロディのパートが好きだったかなぁ。テーマの反復もわかりやすかった。長い

 

『トランセンデンス』

業界用語出てきてハッとしたけど、内容は全然関係なかった。キムタクみたいな天才演技するデップが電子化されて人類を脅かすAIに…お、おぅ。途中のゾンビモノっぽい側面を全面に押し出していって欲しかったなぁ。お行儀の良い展開とかオチとか求めてないし。カオスが観たかった

 

her/世界でひとつの彼女

素晴らしい。AIとの恋愛を否定的にではなく、可能性として描いてるところが興味深い。寧ろテーマは主人公が如何に立ち直るか、如何に自分(や他人)と向き合うかというところにある。個人的には、ルーニー・マーラーに魅入られた。不安定な役をやらせたら天下一品だね

 

All You Need Is Kill

小説の映画化というよりも、トム・クルーズ映画として観た。そしてそれは正解だったと思う。映像ならではの表現もちょくちょくあるし、コミカルなところもあるとこが良い。主人公のリープを経て変わっていく顔つき、挙動が見物だ。満席でビックリしたなぁ

 

『リアリティのダンス』

言うなれば、ホドロスキー版アベンジャーズ!現実と幻想をシームレスに行き来する自伝的映画。ビジュアルが全般的に冴え渡っていて、特に色彩が本当に素晴らしい。

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一見意味不明だが、テーマは驚くほどシンプルで普遍的。ホドロスキー一家が紡ぎ上げる、希望に満ちた1作。最高だ

 

『VHSテープを巻き戻せ!』

なんだこれ!様子のおかしいボンクラしか登場しないぞ!?なドキュメンタリー映画。VHSが映画だけでなく、メディア環境自体に多大な影響を与えていたとは。インディペンデントが乱立して自由だったからこそ、今も愛されているのかもしれない。非常に面白い現象だと思う

 

『LUCY』

すげぇ。何がって、なんとはなしに90分が過ぎたことが。冒頭は良かった。あっと言う間もなく恐ろしい事態に巻き込まれて、自分が解さない言語が飛び交う空間に放り込まれるのは怖い。だが、主人公覚醒後は全てが無意味になってしまう。成長も葛藤もない。エモーションがリニアなのだ

 

『クイーンオブベルサイユ』

バカ(みたいな程の)金持ちの転落を笑う、という話に“結果的に”なったドキュメンタリー、なんだけど……グロテスクすぎて笑えんよ。リアル『ブルージャスミン』であり、現代版『市民ケーン』である。また、どんな環境にあっても子供が敏感に事態を察するってことはよくわかった。ドキュメンタリーならではの光景が生々しい。文化的な貧困さは恐ろしいものだとよくわかる。

 

『TOKYO TRIBE』

全編ギラギラの映画。いつも以上にやり過ぎなくらいやってる園子温演出が冴える。メラ役の鈴木亮平がとにかく最高で、主役のYOUNG DAIS食っちゃってる。というか寧ろ彼が主役だったのか?クレジットでも上だったし。シーン間の音繋がなかったのはわざとなのかな

 

攻殻機動隊ARISE border:4 Ghost Stands Alone』

結果的に最後まで尺不足が気になるシリーズであった。予定の尺に対して情報を詰め込みすぎだ、と言い換えてもよい。今作、雰囲気はとてもよかったのだが、話を複雑にし過ぎて、かえって薄くなってしまっていたような気がする。架空の国で起きた架空の事件が中心なのに、それに対する描写に碌な時間が割かれなかった(割けなかった)のも痛い。汲み取ることはできるが、もう少し、もう1カット加えるだけで印象は大きく変わっただろう。結局、監督が「作家」の冲方丁に「情報負け」してるのが問題の核だ。切るべきところを切って作品のビジョンを守る役割を果たせていない