2013年に劇場で観た映画(アニメ編)

 

 昨年に劇場で観た映画一覧と軽い感想、アニメ編。

 

スタードライバーTHE MOVIE』

冒頭のマッハ3.5で飛んで来るUNKNOWN=銀河美少年に笑ってしまった。テレビ版の再編集とはいえ、2クールある作品を1本の映画に纏めた*1、ということに感心というか感動。ストーリーをタクト、スガタ、ワコの3人を主軸にした部分に絞ったことで、テレビ版とはかなり異なったテイストになっていた。また、テレビ版において、前半では魚ちゃんの語る物語が、後半では劇中演劇「神話前夜」が暗示していたミヤビ・レイジの野望とサイバディの真実が、魚ちゃんの連続した語りに纏められたことで分り易くなっていてよかった*2。冒頭の追加シーン*3もよく動いていたし、アニメの総集編映画としては文句のない出来。個人的には続きが観たい*4…それは4月から始まる『キャプテン・アース』に任せるか

 

『シュガーラッシュ』

CGアニメってあんまり得意じゃなかったけど、本作とか『ヒックとドラゴン』とかにヤラれて、過去のCGアニメ作品*5も幾つか観直した。ゲームへの深い愛とオトナ向けのテーマを、非常に上手く、可愛く纏めている作品。また、吹き替えが素晴らしく、日本語版のヴァネロペ*6はかなり中毒性アリ。主人公:ラルフは、物語の最後、明確に見えてきた自分の立場を受け容れ、元の役割に戻っていく。しかしそれは諦念ではなく、全く新しい世界への一歩なのだ…なんて、大人向け過ぎて、自分が対象年齢外な気さえする。何度観ても面白く、よく出来た傑作

 

『映画 プリキュアオールスターズNewStage2 こころのともだち』

 これまでの旧オールスターズシリーズも、リニューアル後1作目である前作*7も観ていて、その中では旧オールスターズの1作目*8が好きだったのだけど、本作観てそれが揺らいだ。それまで割と無難なテーマしか扱っていなかったオールスターズシリーズにおいて、初めて(と言ってよいはず)ストーリーに重きを置いた作品だったのがその理由だ。前作までのシリーズ作品は、年々増えていくプリキュア全ての変身シーンとセリフ、闘う場面を劇中に入れていて、それがプロットの自由を完全に奪っていた。そういうものだと割り切って観ていたが、増え続ける各プリキュアの変身バンクと名乗りに加えて70分という上映時間の制限が重なると、出来ることなど殆ど無い*9。今作では、完全な変身シーンがあったのは当時放送中であった『ドキドキプリキュア!』と、そのひとつ前のシリーズである『スマイルプリキュア!』だけだ。セリフも、初代のプリキュア他、ストーリーのキーになるキャラクターにのみ割り振られていて、喋らないプリキュアも多くいた。シリーズの足枷となっていた制約から解放され、余裕が生まれた時間を使って、今作の主人公である「プリキュアの妖精」のストーリーを語ることに多くの時間を割く選択はかなり思い切ったものだと思う。テーマも幼稚園児くらいの子供社会における「虐め」であり、虐められる側と虐める(虐めてしまう)側双方の心情を上手く描いていた。勿論完璧な出来ではないが、ストーリーを重視する方向に舵を切った選択を個人的にはかなり買っている

 

 『言の葉の庭

 花澤香菜をキャスティングした意味がわからない。合ってない*10し下手。この話のヒロイン?みたいなキャラクターを演じる力量が明らかに無い。主人公役の入野自由は悪くなかったけど…ストーリーの方もまーどうでもいいもので、入り込むことは出来なかった。基本的に、新海誠が描くようなテーマに興味がないのだろう。仕方ないね。キャッチコピーは「"愛"よりも昔、"孤悲(こい)"のものがたり」らしい。はぁ?

 

『しわ』

バンドデシネの『皺』が原作。”老い”とそれに伴う困難や希望を扱った作品。 コメディタッチな描写もあるけど、恐ろしく、哀しい話ではあると思う。正直、未だにうまく消化できている気がしない。子供時代の美しい思い出の中に生きる老夫婦、かつて纏っていた栄華の思い出の中に生きる老婦人…彼らを「生きながらに死んでいる」と捉えるか、「そういう生き方もある」と捉えるかは観る者に開かれている。『ヤング@ハート』の様に、人生のどの時期に観るかによって見え方が変わる作品だろう

 

攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain』

攻殻×冲方丁で当然行った。取り敢えずロジコマ可愛い。海外ドラマサイズで攻殻やるってコンセプトみたいだけど、圧倒的に尺足りてない。普通に映画並みの尺でやればいいのに。それだと間がかなり空くことになるだろうけど…それでもいいと思う。設定の殆どがシロマサのものだって観た後で知って驚いた。坂本真綾はかなり田中敦子に寄せた演技してるけど、キャスト全替えしたんだから思い切ってもっと変えればいいのに。演技はこれまでの攻殻映像化作品に引き摺られつつも、プロットは冲方丁の作家性全開。なんだかんだ、最後まで付き合うことになるだろう

 

『パリ猫ディノの夜』

 フランス製。日本のアニメが扱わない*11ようなテーマを扱っている。気ままな猫:ディノを介して、少女:ゾエと泥棒:ニコが出会う。上映時間70分でスッキリ観られるいい話、といった感じ。ワンテーマなら、このくらいの時間が丁度いいのかも

 

『SHORT PEACE』

 OP+4作品のオムニバスなのだが、作品ごとのクオリティ差が酷い。ダントツで良かったのは大友克洋監督作「火要鎮」。簡潔なストーリー、場面転換の上手さ、火事の描写等々、短編ながら見事な出来。早見沙織出てるし。これが観られただけで、良かったのかもしれない。次点はカトキハジメ監督作「武器よさらば」。悪くはなかったけど、この手の話、散々やってきたじゃん…と思ってしまって、あまり乗れず。他2作はもー知らん。一応全作「日本」をテーマにしてるらしいが、緩くでも雰囲気とか話を統一することはできなかったのか?

 

 『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』

ファンムービーなんです。そう、ファンムービーなんです…はぁ

 

『PERSONA 3 THE MOVIE -#1 Spring of Birth-』

メディアがゲームから映画に変わったのに、ゲームのストーリーをほぼそのままナゾル愚を犯している*12。しかし、ゲームからのファンはそれを望んでいるという…ホントに?数十時間かけるからこそ生きるストーリーだったり設定だったりを、そのまま映画にして上手くいくわけないじゃん。原作の設定やキャラ配置は維持するにしても、大幅にエピソードを削って映画というフォーマットに合うように調整すべきだろう。以前の失敗*13に懲りたのか、それともこの企画が『ペルソナ4』のアニメ化成功によるものだからなのかはわからないが、少なくとも#1は原作の愚直なトレースにしか見えなかった。今後、思い切った変更を加えていくことになるのかが見所か…

 

 『攻殻機動隊ARISE border:2 Ghost Whispers

 冲方丁の作家性がいよいよ全面に出てきたなといった印象。攻殻は誰が作っても結局攻殻になると言われつつ(作る側もよく言っている)も、同じフォーマットだからこそ、逆に各作家の個性が浮きだして見えるという面白さがある。社会に対して己の有用性を証明し続けなければならないという問題意識が本作の底流にはあって、それが特に冲方丁らしいと感じた。オチはともかく、ヴィヴィはなかなか良いキャラ。ロジコマは相変わらず可愛く、そして尺も相変わらず足りていない

 

 

 

*1:魔法少女が1クールのテレビシリーズを前後編に分けるなんて暴挙に出ていた中、これはエライ。というか、当たり前だと思うけど…

*2:第22話 「神話前夜」はテレビ版でも好きな回なので削られてしまったのは残念だが、尺の都合と繰り返しを避ける意味で、正しい選択だろう

*3:ザメクが子供の声だったのはどういうことなんだろう?力を封じられてるってことなのか

*4:エントロピープルって何だったの?

*5:塔の上のラプンツェル』『怪盗グルーの月泥棒』『カールじいさんの空飛ぶ家』等々

*6:演:諸星すみれ

*7:『映画 プリキュアオールスターズNewStage みらいのともだち』

*8:『映画 プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合! 』理由は、シリーズ中でも最高レベルの作画とストレートなプロット

*9:とは言っても、『映画 プリキュアオールスターズNewStage みらいのともだち』はその制約の中で頑張っていなかったわけではない

*10:合ってないのは本作に限ったことではないと思う。花澤香菜が演じるキャラクターでしっくりきたことが殆どない。キャスティングの問題か?

*11:というより、扱い方が違うと言った方が正しいかもしれない

*12:観る前にわかっていたことなんだけど…

*13:『PERSONA -trinity soul-』のこと。個人的には大傑作だと思っているが、世間の評判は芳しくない模様…というか存在を知られていない